短歌同人「ポストシェアハウス」

青松輝と鈴木えてによる短歌同人「ポストシェアハウス」のブログ。

創刊にあたって

創刊にあたって

 

 短歌誌「ポストシェアハウス」を創刊します。短歌誌はシェアハウス的です。互いに邪魔しないようにそれぞれの作品が並ぶ感じ。

 

恋人でも家族でもない半裸だなルーム・シェアは長い合宿

(山階基)

 

 テレビ番組「テラスハウス」のヒットに始まり、2010 年代後半はシェアハウスブームでした。これは多様性、他者の尊重にまつわる問題意識が社会に広がるにつれて「シェアハウス」的な考え方が広まったことによるのでしょう。他者との共存の難しさはここ数年の社会のキーワードという感があります。

 

晴らす(harass )この世のあをぞらは汝が領にてわたしは払ひのけらるる雲

(川野芽生)

 

 ではなぜ僕たちの同人誌は「シェアハウス」ではなく「ポストシェアハウス」なのか?

 

 既存の短歌のメディアの多くはシェアハウス「すぎる」と思います。総合誌も同人誌もただ並んでいるだけという感が拭えません。もちろん多様性を後押しする雰囲気は大切ですが、動きが足りない。短歌の面白さを今よりダイナミックに感じたい。「短歌シーン」のようなものを(ごく小さいものしか存在しないと知りつつ)方向づけようとする動き、そして呼応して新たな動き、という建設的な循環が見たい。しかし残念ながら僕がいち読者として満足できる現況ではありません。無数の短歌たちが生まれて消えていくだけのように見えてなりません。

 

ガムを噛む私にガムの立場からできるのは味が薄れてゆくこと

(我妻俊樹)

 

 それじゃ自分でやるしかない、ということで、短歌誌を立ち上げることにしました。メンバーは僕と、おなじくQ短歌会の鈴木えての二人。目標は他者の尊重や言語表現の政治性、を前提(シェアハウス)として引き受けた上での新たな価値観(ポスト- )の創出。毎号魅力的な特集を用意して、ただ一緒に住むだけではない、新たな物を提示できる同人誌にしていきます。そのために二人という動きやすい人数構成になりました。

 

貸せるものがないから歌をひとつだけいろんな声で何度も唄う(平岡直子)

 

 短歌というジャンルのうねりを大きくするためには、トップダウン的でない価値の創造が重要です。単なる歌壇の下部

組織(新人賞を取った者から順に「一軍」に呼ばれる?)ではない、同人誌/学生短歌サイドからの働きかけを行ってい

きます。

 

若いうちの苦労は買ってでも、でしょう?磯の匂いがしてくるでしょう?(五島諭)

 

 たくさん苦労するつもりです。

 

みんなにはもつとていねいにゐてほしいやさしいままできみにかちたい(岐阜亮司)

 

 後押しよろしくお願いします。

 

2019年3月23日 青松輝(Q短歌会/ポストシェアハウス)