短歌同人「ポストシェアハウス」

青松輝と鈴木えてによる短歌同人「ポストシェアハウス」のブログ。

2019-01-01から1年間の記事一覧

評論(1) 青松輝は「分からない」か? 鈴木えて

青松輝の評は難しい。それに今回取り組むのは、ひとえに自分(鈴木)が青松のファンであり、その最新作が載っている「ポストシェアハウス」を一人でも多くの人に読んで欲しいからである。ポストシェアハウス同人の仲の良さを感じてホッコリしながら読んでい…

ポストシェアハウス第1号一首評(5) 不安などすべてはなって鳥にして一秒 教わったとおりできた 杉本茜

不安などすべてはなって鳥にして一秒 教わったとおりできた /「光源旅行記録」杉本茜 まず全体の流れを確認したい。「不安など」という導入から「すべてはなって」とひらがなに開かれ、さらにそれが鳥になるというのは「不安」という概念から字面のうえでも…

ポストシェアハウス第1号一首評(4) 飲み下すポカリスエットが甘すぎて私まだ何も失ってない 坂本歩実

飲み下すポカリスエットが甘すぎて私まだ何も失ってない/「御伽噺出会わなければ」坂本歩実「私まだ何も失ってない」という強い言い切りが印象的な一首である。その言い切りを導くのは「飲み下すポカリスエットが甘すぎて」という上の句。「飲み下す」には…

ポストシェアハウス第1号連作評① 岐阜亮司「感情の訓練」

巧い。 たぶん本人も言われ飽きているだろうけど、岐阜亮司は短歌が巧い。 ただ「巧い」という上で気になるのは、ふだん誰かが歌会とかで「巧い短歌ですよね」と言ったときに感じられる「確かに巧いけど、巧いのと凄いのとは違うから、…ねえ?」みたいな嫌味…

ポストシェアハウス第1号一首評(3) じゃあ愛の話しましょう 崇高なからだが燃えて崇高な灰 櫛田有希

じゃあ愛の話しましょう 崇高なからだが燃えて崇高な灰 /「パーマネント」櫛田有希 「愛」「崇高」というモチーフからキリスト教の文脈で捉えたくなるが、それを痛烈に拒否するシニズムに満ちた歌である。 歌は「じゃあ愛の話しましょう」という発話から始…

ポストシェアハウス第1号一首評(2) 手をつないで大きな虚に、平らかな声で互ひをだめにしあつて 岐阜亮司

手をつないで大きな虚に、平らかな声で互ひをだめにしあつて/「感情の訓練」岐阜亮司 まず句切れとしては、手をつないで/大きな虚に、/平らかな/声で互ひを/だめにしあつて と読むことができる。「虚」は「きょ」とも「うつろ」とも読めるが、字足らず…

ポストシェアハウス第1号一首評(1) スクランブル交差点右上へ行く人間たちの裏地はピンク 安錠ほとり

スクランブル交差点右上へ行く人間たちの裏地はピンク /安錠ほとり「るるるメ」 ポップ、という第一印象の歌である。「スクランブル交差点」と「ピンク」というカタカナで挟まれた作りをしているところ、そしてピンクという語感からの印象だろう。スクラン…

創刊にあたって

創刊にあたって 短歌誌「ポストシェアハウス」を創刊します。短歌誌はシェアハウス的です。互いに邪魔しないようにそれぞれの作品が並ぶ感じ。 恋人でも家族でもない半裸だなルーム・シェアは長い合宿 (山階基) テレビ番組「テラスハウス」のヒットに始ま…